レーザートーニングの真実:業者によって作られた施術

2018年日本美容皮膚科学会LTセッション

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20. 2018年日本美容皮膚科学会LTセッション

2018年8月3~4日,東京国際フォーラムで日本美容皮膚科学会が開催された。都心の一等地の会場で広さも余裕たっぷりで,招待外国人も多く,すべてにおいて豪華な学会であった。ちなみに,この学会のプラチナスポンサーは「あの」JMEC社である。

筆者が特別の興味を持っていたのは,1日目午前中のレーザートーニング(LT)のセッションであった。
1番目の演題は座長のK元教授が責任者となっているLTの臨床試験の結果報告であった。K元教授が配下の4人の医者にやらせた臨床研究で,その1人が発表行った。K元教授らしいすばらしく良くデザインされた臨床試験で,流れと数字だけを見ていたら,見事にLTの有効性が証明されたように見える結果であった。ところが,提示された症例写真は,著効とされた症例はすべて,肝斑と老人斑の合併症例において老人斑が取れて肝斑がきれいに残っている症例のように見えた。また,無効とされた症例は,初めから肝斑のみの症例で,治療後も肝斑が残った症例であるように見えた。つまり,症例写真を見る限り,「LTは老人斑に少し有効だが,肝斑には全く効果がない」ことを証明したように見えるものであった。このことを指摘するために発言した筆者の発言を,座長のK元教授はなぜか発言途中で制止しようとした。また,あれは,老人斑ではなく肝斑の部位の濃さを機械で測定した結果,1.0以上改善したので著効としたとの苦しい回答を,発表者ではなくK元教授自身が顔を真っ赤にして力説していた。この臨床試験の「結果」について,疑問の声が会場の他の出席者からも上っていた。

これまで,数々の輝かしい業績を日本の皮膚科学会に残してきたK元教授ともあろうお方が,業者の意向を忖度して,こんな茶番のような臨床研究を学会発表や論文として人前に出すものだろうか。K元教授におかれては,こんなところで晩節を汚さないでいたただきたいと願うばかりである。

2番目の演題は,米国からの招待演者であった。各種レーザーなどを巧みに取り入れて良い臨床結果を出しているように見えた。しかし,かなり有名な演者なはずなのに,残念なことに彼女は雀卵斑と老人斑の診断がついていなかった。全体として,白人のシミ治療は日本人に比べて「楽」である。まず,白人にはADMがないのですべてのシミがQスイッチレーザーなしでもどの方法でも取ることができる。そして肌が白いのでPIHの心配がない。少々荒っぽいやり方をしてもシミは簡単に取れるのである。

3番目の演題は,LTの布教者Y先生の発表であった。内容は,いつもと変わらないものであったが,「LTは肝斑治療のオプションとして一定の効果が得られる場合がある」という明確な発表であった。筆者はこの意見には根本的に反対だが,Y先生の豊富な経験から生み出されたひとつの意見としては傾聴に値するし,今後とも彼女とは科学的な議論をしていきたいと思う。しかし,Y先生のこの意見をいいように利用して「肝斑はLTのみで治る」と宣伝販売を行おうとする業者には,この世界から退場していただくしかないと思う。

業者が学会や研究のスポンサーになるということは,その学会が会員にとって有益なものになり,そして学会全体が発展する助けになるのであるならば,本質的に良いことだと思う。しかし,医師といえども弱い一人の人間であり,業者から利益を与えられると,どうしてもその業者の意向を忖度して業者に都合のよい発言をしたり業者の利益につながる行動を取ってしまったりする可能性がある。これが「ミドリ十字事件」にもあった医学の発展を阻害する大きな問題点である。筆者も業者から講演料等を受け取ることはあるが,それにより決してブレることなく真実のみを語り続けることが自分に与えられた使命だと考えている。幸い,筆者は独立した開業医であり,組織や学会などの「しがらみ」が全くないので,完全に自由に行動・発言できるのが強みである。時には,他の医師・業者・学会の利権のトライアングルから巨大な圧力が加えられる事もあるが,それにつぶされてしまうことなく立ち向かうことを生きるエネルギーにしようと思う。また,もしも,つぶされてしまった場合には,それはあきらめるしかないだろう。

■ 管理者プロフィール

葛西 健一郎(医師)

1986年
京都大学医学部卒
1986年
京都大学形成外科
1987年
関西医科大学形成外科
1992年
大阪市に「葛西形成外科」開業
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