レーザートーニングの真実:業者によって作られた施術

レーザートーニングに対する医師たちの考え方と反応のいろいろ

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06. レーザートーニングに対する医師たちの考え方と反応のいろいろ

 レーザートーニング(LT)が登場して以来、形成外科・美容外科・美容医療にかかわる医師たちは、さまざまな考え方と反応をしてきた。その医師たちの反応と行動を代表的な6群に分けて説明する。

<第1群>LTは効くわけないから無視する

 この反応は、形成外科やレーザー医療のベテラン医師たちに多い。かく言う筆者もこの群に属していた。

 すでに、アザやシミのレーザー治療に対して十分な実績や経験のある医師たちは、肝斑という特殊な疾患が一つのレーザーによる画一的な治療によって治るわけがないことを知っている。だからLTがブームになっても飛びつくことはない。また、すでに実績のある医師は既存の患者の治療で忙しいし、無理して売上を増やす必要がない。だからLTに飛びつく必要もない。診断力があるからレーザーで治るシミだけを選んで治療するだけで何も問題なく食べていける。LTブームは別の世界のできごととして見ていた。少し「おかしいな」と思っても、別に他人のやっていることに文句をつけても何も得しないし、推進派の医師にきらわれるだけ損と考え「無視」するのが最善ということになる。

 筆者も完全にこの行動パターンを取っていた。LTの反対運動をしても何も得しない。医院の売上は増えない。ということで、無視を決め込んでいた。しかし、筆者の場合には、LTの肝斑増悪患者が急増している現況を見て、とにかく「黙っていられなくなって」「おかしいものはおかしい」と言うことに変更した。望むらくはこの第1群に属する医師の多くにLT反対運動に参加してもらいたいと思う。しかし、この運動は、まったく「得しない」ので、この反対運動の参加者は増えないかもしれない。

<第2群>LTは良いかもしれないし怪しいかもしれない。だから慎重に見守りながら方針を決定する

 この反応は、大学の形成外科・皮膚科である程度まで行って、あるいは開業して、正規の医療をやりながら慎重に美容領域を広げていこうとしている、良識派・学術派の中堅・若手医師に多い。

 この群の医師たちは、全体的に新しい医療の話題に敏感で勉強熱心である。だから医師同志のつきあいも大事にするし、業者セミナーにも積極的に参加する。では、ブームに乗せられやすいかといえば、重要な決定には極めて慎重である。筆者は最近注意して見るようになって、この群の医師が意外に多いことに気が付いた。慎重によく考えて行動するし、科学的思考もできる医師たちなので「まがいもの」に手を出すことは少ないし、仮に手を出したとしても大きな問題を起こすことは少ない。世の中がこのような医師たちばかりであれば良いのだが。

<第3群>LTは特殊療法として使える面がある

 ベテランの美容医療・レーザー医療の「使い手」の一部がこの群に属する。すでに、いろいろな新医療を組み合わせて「自分の世界」を構築しているので、経験豊富で、問題が起こりかければ早めに対処できる。ベテランは業界内で有名なので、講演やセミナーに呼ばれることが多く、業者に「担がれやすい」のが、問題である。

<第4群>新医療を売り出すことで先行者利益を得るマスコミ医師

 昔から、この群に属する医師は存在した。何でもいいから新しいものを取り入れることで「新しいもの好き」の患者を取り込み、利益をつかむ。それにはマスコミの利用が欠かせない。中央のマスコミとタイアップするのが難しいことも多いが、地方都市の場合には地方テレビ局のようなローカルメディアにつながっておけば、その地方で大きな先行者利益を手にできる。この群の医師は何よりも人気・評判というものに敏感である。その医療の本質を見極める能力には乏しいことが多いが、大衆・マスコミの評判・関心に対しては鋭い感性を持っている。この群の医師の実数は少ない(なりたくてもなかなかなれない)ので、国民医療に直接悪影響を与える度合いは小さいが、業者・マスコミを動かして、第5群・第6群の医師たちに大きな影響を与えるので始末が悪い。

<第5群>よく分からないがやってみる。患者が喜べばそれでよい

 この群の医師は、特に美容外科のベテランに多い。すでに美容外科で十分成功していても、新しい患者満足ツールには貪欲である。美容の患者が勝手で移り気なのは身にしみて知っている。常に新しい患者満足ツールを入れないと安心できない。美容患者は長期的に良いかどうかよりもその時快適かどうかという基準で治療を選ぶことを知っている。すでに成功しているので資金には困らない。もともとレーザーの理論など分からないから勉強する前にとにかくやってみる。評判が悪ければ中止すればよい。これくらいの認識である。

 この群の医師は副作用には敏感(クレームを恐れる)なので大きな問題を起こすことは少ないが、「ブームを増幅する」グループなので困りものである。

<第6群>良し悪しはわからないが、みんなやっているからやってみる

 この群の医師たちが最大の問題である。他科からの美容参入組や、ものを知らない新規開業医、チェーン美容皮膚科などに多い。「セミナーを見て」あるいは「どこそこが導入してうまくいっているから」「自分も導入したらうまくいく」と勘違いしてしまう。業者にとっては最高のカモである。投資ができるのだから資本力はある。しかし肝心の経験と知識がないので業者のいいなりである。LTの肝斑増悪患者のほとんどは、この群の医師たちによって生み出されていると考えられる。この群の医師をなくさないといけないのだが、資本原理主義社会においては、それは不可能である。

(2015/1/25記)

■ 管理者プロフィール

葛西 健一郎(医師)

1986年
京都大学医学部卒
1986年
京都大学形成外科
1987年
関西医科大学形成外科
1992年
大阪市に「葛西形成外科」開業
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