08. レーザートーニング副作用の発生とJMECの対応
JMECはレーザートーニング(LT)を次のヒット商品として非常に積極的に売り込み、LTは全国で爆発的に普及した。大阪でも、筆者の住むマンションのすぐ近所に開業した皮膚科にも「メドライトC6入れました」と看板に書いてあって、驚いたものである。ところが、2011年ころから、少しづつ「レーザートーニングを受けて肝斑が悪くなった」という患者が筆者のクリニックを訪れるようになってきた。はじめは少なかったが、だんだん増加している。特に一つの特定の施設がたくさんの増悪患者を出しているようでもない。症状に一定の傾向があり、やはり、レーザーが原因のようである。
2012年5月15日、筆者はJMECに対して「要請書(PDFファイル)」を送った。LTが有効か無効かはわからないが、とりあえず健康被害が出ていることは間違いないので、ユーザーに注意喚起すること、またレーザー経験の少ない医師に販売する際に十分慎重に行うことを要請したわけである。
ところが、この筆者の要請書に対するJMECの対応は、恐るべきものであった。JMECは、メドライトC6のユーザーに対し、ユーザーアンケートを行った。しかし、古くから刺青除去機械としてメドライトC6を使ってきたユーザーである筆者のところにはアンケートの依頼は来なかったことから見て、JMECはLT賛成派の医師を選んでアンケートを行ったと想像される。そのアンケート結果(PDFファイル)は8月に公表されたが、その内容も恐るべきものであった。推定患者3万人もまったく根拠なく(第一、患者の絶対数なのか治療回数なのかも不明である)、増悪患者は38例だから増悪率は0.13%という。55%の医師は「自院で肝斑増悪して他院を受診した患者がいる可能性はない」と断定しているそうだが、全例追跡調査を行ったのだろうか。全体として、アンケートの集計としてあまりにも恣意的で、ロジックも幼稚である。これを営業ツールとして使おうという意図が濃厚と見て取れたので、2012年9月12日、筆者はこのアンケート集計の問題点を指摘して、営業ツールとして使わないよう要請書(PDFファイル)をJMECに送った。
しかし、この要請書に対してJMECからの返答はなく、筆者の危惧通りにこのアンケート結果は販促ツールとして広く使われたようである。その後全国の幾人もの医師から、JMECの営業マンがこのアンケート結果を持って「レーザートーニングの安全性が証明されました」と、セールス攻勢をかけてきたとの証言を得ている。筆者の危惧通りになってしまった。
筆者は、もはや「営利企業JMEC」に倫理的行動を求めるのは無理であることを悟り、学術的な面からレーザートーニングを止めなければならないと決意した。
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(2015/1/25記)