11. レーザートーニング推進派医師たちの奇妙な行動
レーザートーニング(LT)推進派、すなわちLTが有効であるという意見の医師たちには、奇妙な連帯意識がある。この連帯意識は、筆者のようなLT反対派から見ると到底理解できないものである。
そもそも医学はサイエンスである。科学的真実は唯一無二のものであり、医師同士の合意や多数決とは無縁のものである。科学の対極にあるのが政治である。政治に絶対的真実などはなく、その時々に賛成者の多い者が勝者(多数派)として優位に立つ。政策の良し悪しよりも選挙で勝ったものが権力を得るのが政治である。他方、科学は真実が明らかになったときに「コペルニクス的転換」が起こる。科学的真実と多数決は関係がない。
ところが、LT推進派は、不思議なほど「合意」や「多数決」を重要視する。LTが科学的に有効かどうかよりも、LTを有効と思っている人たちの数や合意が大切なようである。2014年秋に行われた、美容抗加齢医学会がその極致といえよう。出席者のほとんどがLT推進派の医師たちであった。筆者は出席しなかったが、会場は「総決起集会」の様相で、満場一致でLTの有効性が決議されたそうである。
考えてみれば、医学において賛成派がいくら大多数で有効性を決議しても何の意味もない。医学はサイエンスであって、政治ではない。では、なぜLT賛成派がこれほどまで「合意」「決議」にこだわるのか、ここに答えがある。
人間というものは、絶対の自信のあるものについては不安を感じることはない。しかし、自分の言動がこれで良いのか不安な場合には「他人の目」を気にするものである。たとえば、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)という特殊なタイプのシミがある。このシミはなかなか対処が難しいのだが、筆者はQスイッチルビーレーザーという特殊なレーザーを用いれば全例完治させることができることを知っている。だから、まったく不安を感じることはない。この治療法を他の医師に認めてもらえるかどうかなど関心がない。自分で必ず治せるのだから。ところが、扁平母斑というアザがある。いろいろなレーザー治療を行っているが、再発が多くて完全に治す自信はない。筆者もいつでもよその施設では扁平母斑をどう扱っているのか気になるものである。
つまり、2014年秋の学会でLTの有効性が決議されたということは、LT推進派の医師たちが実はLTの有効性について疑いを持ち、自信がないことの現れではないかと想像されるのである。
(2015/1/25記)