16. 2016年後半の学会を総括して
2016/8/6-7 日本美容皮膚科学会(東京)
最近参加者も増えて内容も充実してきている本学会だが,今回はニキビの講演が多くLTの話題は少なかった。筆者はLTの副作用(肝斑増悪・白斑形成)に対する治療経験について発表した。肝斑増悪に対しては保存療法が有効だが,白斑は難治であることを示した。K医師のグループから副作用の長期経過と対応策の試みについて出題され,やはり白斑が難治であることが示された。Y医師のグループからは相変わらずLT改善症例の提示のみ行われたが,副作用については言及なし。10年前から全く変わっていない。
2016/9/15-16 日本形成外科学会基礎学術集会(大阪)
基礎研究の発表が多い学会なので,レーザー関連の発表は少ない。筆者は,LTと同様の副作用がピコ秒レーザーでも生じ得ることを示し,警鐘を鳴らした。
2016/ 10/ 21-22 日本レーザー医学会総会(旭川)
例年より出席者は少なめであったが,活発な討論が行われた。筆者は,ピコ秒レーザーによる美顔治療によって肝斑が増悪した症例を報告し,LTと同じく肝斑にレーザーが当たると起こる宿命的な問題点であることを指摘した。それでもY医師は難治性肝斑の治療のオプションとしてLTは価値があるという趣旨の発言をした。筆者は,果たして「難治性肝斑」とは何なのか,診断が違っている可能性はないのか,検討した方がよいことを指摘した。有名医師でも肝斑の診断が確かかどうか再考の余地があることが浮かびあがってきた。肝斑の診断基準につき再検討する必要があると痛感する。
2016/ 10/ 23-25 日本美容外科学会(京都)
筆者は会員でないので出席しなかったが,プログラムを読んだ範囲ではLT関連の演題はなかったようである。
一時期いろいろな学会でもてはやされたLTであるが,もはやほとんど発表そのものが減少し,完全に「終わった」感じがする。LTには一時的効果しかなく重篤な副作用の可能性のある危険な施術であることが,まともな学会では広く認知されたということだろう。登場から10年以上経って,いまだに作用機序が科学的に証明されていない点も,これまでたくさん出ては消えていった泡沫な新治療の数々と同じであったことを示している。これまでにも,いろいろな新治療が出ては効果がないということで消えていったわけだが、LTはそれらとは段違いに重大な問題(難治性白斑形成)を持っている。効かないだけならまだ良いが,回復不能の副作用の可能性があるわけである。それから,薬の投与ならそれを止めれば済むのだが,高い機械を買わされてしまった医療機関は元を取るまで施術を止めないのでLTの犠牲者は今でも拡大していることが問題である。業者は相変わらず有効な対策を取らないし,行政も何も行わない。被害者が団結して集団訴訟でも起こせば状況は変わるかもしれないが。