レーザートーニングの真実:業者によって作られた施術

2017年後半と2018年前半を総括して

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18. 2017年後半と2018年前半を総括して

この時期になると,レーザートーニング(LT)を推奨する動きはほとんどなくなってきている。学会の演題もLT関連のものはほとんどなく,業者セミナーもほとんど行なわれていない。その理由はいくつか考えられる。LTそのものがあまり治療として意味のないことが知れ渡ってきたということもあるだろう。美容治療で金儲けしようという医師層にだいたい行き渡ったということもあるかもしれない。しかし筆者は,一番大きいのは,メドライトC6の製造会社ConBio社がCynosure社に買収されたことだと考えている。ConBio社は日本に販売子会社を持っていなかったため,JMEC社に独占代理販売権を与え,非常に安い仕切り価格で卸していたことを複数の関係者から聞いている。つまり,JMEC社は,メドライトC6を一台売るたびに非常に大きな利益を上げることができていた。それが,Cynosure社によるConBio社買収によって,事情が変ってしまった。

Cynosure社は日本に販売子会社を持っているので,他社に無理して安く卸して販売してもらう必要がない。おそらくJMEC社に対するC6の仕切価格を大幅に引き上げたのだろう。JMECの立場から見れば,同じ一台を売った時の利益が激減したので,メドライトC6を売る意味が小さくなったということである。事実,JMEC社は,現在まで,メドライトC6を売りながら同時に他社のQ-YAGレーザーを販売している。考えてみれば,あれほど,メドライトC6が数あるQ-YAGの中で最良と言っていたのは何だったのだろうか。

さて,ともかくも,レーザー会社の買収劇によって,LTの普及にブレーキがかかったことは良かったと言える。しかし,筆者の恐れていた通り,次のピコ秒レーザー問題が,大きくなってきている。Qスイッチレーザーの照射時間幅(5~50ns)を,1ns未満のピコ秒オーダーにしたら,どんな臨床効果が得られるのかという点は非常に興味がある話題であったが,近年数種類のピコ秒レーザーが発売され,国内外でデータが集まりつつある。刺青除去には非常に有効であることが判明しているが,低フルエンスで美容に用いようという動きが「くせもの」である。筆者のクリニックでも,この治療を行っているが,雀卵斑や多発性老人斑には効果が高い。ADMも,上手にやれば改善させることができる。しかし,肝斑が問題である。レーザーを当ててしばらくは肝斑も薄くなるのだが,1ヶ月くらいで再発あるいはむしろ濃くなって出てくる。したがって,1ヶ月より短い間隔で繰り返し照射すれば薄い状態が維持できる。しかし繰り返し照射をやめて1ヶ月たつと濃くなって再発する。白斑が生じることもある。よく考えてみれば,これって,LTと全く同じではないか!

つまり,低フルエンスピコ秒レーザー治療は,雀卵斑・多発性老人斑の治療にはかなり有効だが肝斑の治療手段にはなり得ない。低フルエンスピコ秒レーザー治療を行う場合,1ヶ月以上間隔をあければ,間違って肝斑に当ててしまったときに濃くなってくれるので,その間違いに気が付くことができる。そうすれば,内服治療を行って肝斑を治すことができる。1か月以上の間隔をあけることが非常に重要である。

■ 管理者プロフィール

葛西 健一郎(医師)

1986年
京都大学医学部卒
1986年
京都大学形成外科
1987年
関西医科大学形成外科
1992年
大阪市に「葛西形成外科」開業
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