恐れていたことがすでに始まっているようです
「Qスイッチレーザー」より,さらに照射時間幅を短くした「ピコ秒レーザー」が,日本で発売されてから約3年になります。私のクリニックでは,ピコ秒アレキサンドライトレーザー(PicoSure)とピコ秒Nd:YAGレーザー(PicoWay)を導入して使用しています。ピコ秒レーザーは,刺青の除去に抜群の効果を示すことは海外・国内のデータから明らかです。さらに,肌の美容にも良いというデータも外国ではかなり出てきています。当院のデータでも,老人斑・ADM・肌の張りに良さそうだというデータが集まりつつあります。
ところが,肝斑に対しては、ピコ秒レーザーを当てて悪化する例があるので,たいへん危険です。もちろん,すぐに気が付けば,内服治療などで回復可能ですから,大事には至りません。ただ,問題に気が付かずに治療を続けてしまうと,悪化が進み,白斑が出ると,回復が難しくなるので大変問題です。
ピコ秒レーザーは,肝斑に当てるとその直後は薄くなるので,レーザートーニングと同じ使い方ができる点が問題です。1か月以内の短い間隔で繰り返し照射をすると肝斑が良くなっていくような錯覚に陥ります。もちろん,止めれば元に戻る点や,回数を重ねると難治性の白斑ができてしまう点も,レーザートーニングと同じです。
「ピコ秒レーザー」で「トーニング」をやるところが出てくると,レーザートーニングと同じ被害が広がるのではないかと恐れていたのですが,どうやら本当に始まっているようです。先日来院した患者さんは,「ピコトーニング」を17回受けて,肝斑が悪化すると同時に細かい白斑をたくさん形成していました。聞けば,そのクリニックでは,1回1万円で,医師の診察はなく看護師が一律に当てているようです。